東京藝術大学卒 日本画家 澁澤卿の軌跡

Diary 2005年06月

5月31日から4日まで中国の黄山にスケッチに行ってきました。私の仕事は皆様よくご存知のとおり日本の風景を画いております。ではなぜ黄山のスケッチに行ったかと言うと、私の絵は制作の過程において一度水墨画で仕上がる状態があり、水墨画というと古来より黄山の風景を中国だけでなく日本の先人たちが画いているからです。黄山は絵の世界では日本の原風景でもあると思ったからです。黄山は上海から飛行機で50分、屯渓という町から車で2時間のところにあります。雲海から頭を出す岩山を見たくて雨の多いこの時期を選びましたが、滞在3日間では雲海に出会うことは難しいかもしれないと言われていました。屯渓に夜に着き、ガイドから明日は大雨かも知れないと告げられ大雨の時は真っ白で何も見えないとのこと。次の日朝から雨。でも車で黄山に向かう途中で徐々に明るくなり黄山の麓に着いた時には雨は上がっていました。途中後ろの山々に霞が掛かり小雨の降る中、日本の昔に見た風情そのままに田植えが行われている田園風景はいまちょうど開いている今年の私のカレンダーに掲載されている「野趣溟々」の風景に良く似ていました。ケーブルで山頂付近まで上がるとまだ真っ白な世界でした。最初に案内された景観の良い場所で真っ白の世界を残念な気持ちで眺めていると突然目の前に黒い大きな松の生えた岩山が姿を現しました。一瞬でしたが、今まで感じたことのない感動に襲われました。そのご徐々に霧が晴れて山の下に下がり期待していた雲海の上に頭を出す岩山を見ることが出来ました。まさに水墨の世界です。雲が流れて一秒ごとに姿を変える景色を頭に叩き込むようにおさめました。とてもスケッチブックをだして画いている暇はありません。行程のほとんどが階段で足が棒のようにかちんかちんになりながらも貪欲に景観の良いところを求めて歩きました。翌朝からの足の痛さは尋常ではありませんでした。でもその朝足の痛みをこらえながら登った山頂から見た真っ赤な朝日はまたまた制作意欲を掻き立てるものでした。充分な成果とともに足を引きずりながら日本にもどってきました。頭の中の映像が消えてしまわないうちに絵に表したいと思っています。乞うご期待。