東京藝術大学卒 日本画家 澁澤卿の軌跡

Diary 2007年09月

澁澤卿復活

多発性骨髄腫闘病記

今年元旦に恒例の除夜の鐘を突いて年越し法要をすませて家路に着いた折、車の助手席下に落ちた鎌倉に入る通行証をとろうと手を伸ばしたところポキポキと音がして左肋骨を二箇所折ってしまいました。やっと治癒したころ再び右下に手を伸ばして再び右肋骨を折ってしまいました。これは異常だと思って検査したところ多発性骨髄腫と告知されてしまいました。血液中の白血球内にある形質細胞が異常に発生し悪玉となり骨髄腫細胞となり骨を犯していく癌です。インターネットで調べると余命3年。1週間ほど仕事が手につかないほどショックでした。大学病院で診察を受けたところこの数年で医学が進み今はまだ完治と言う言葉はないが治療がうまく行くとそれに近い状態にはなるということでした。希望が持てて、すぐに入院して抗がん剤の治療が始まりました。

健康だけを自慢にしていた私にとって始めての病院生活でした。抗がん剤治療のあとは大量のステロイド系の薬の投与です。4日間続けて服用して少し休むという繰り返しで徐々に身体に薬が残りひどい副作用に悩まされました。5月下旬にこの治療も終わりがん細胞がだいぶ減ったところで自家造血幹細胞移植という治療のために造血幹細胞を採取しなければなりません。抗がん剤で白血球を下げ薬の力で勢いよく白血球の数を上げて造血幹細胞が沢山血に混じって身体を回ったところで血液中から採取するのです。一度目の試みでは抗がん剤が効きすぎて白血球が100を割ってしまい高熱が続き採取を諦めました。2度目のトライで無事に移植に必要な量の細胞を採取することが出来ていよいよ治療の最終段階の自家造血幹細胞移植のため7月30日より4度目の入院生活に入りました。

始めは白血球が0になってしまうので少しでも持病があると大きな病気になってしまいますのであらゆる検査が行われ治療が施されます。そしていよいよガラス張りの無菌室に閉じ込められて抗がん剤の投与です。それはもう今まで体験したどの薬より強いものでした。吐き気とだるさと口内炎が襲ってきました。早く日にちが経ってくれることをただ祈る毎日です。数日して採取して保存しておいた細胞を移植します。それから白血球が0になっていきます。幸いなことに持病がなかった私は大きな合併症もでずただただ吐き気との戦いでした。白血球が0になってからの立ち上がりは医者が驚くほど早く2週間ほどで無菌室から出ることが出来ました。出産前の強いつわりを体験されたご婦人からするとたいしたことないなとお思いでしょうが男の私には味わったことのない辛い2週間でした。

勿論無菌室から出られたといっても抗がん剤の副作用はまだまだ続いています。口から物を食べられたのは暫らくしてからです。口の中には口内炎と苦い唾で味など分かりません。白血球の数がなかなか上がらず退院が延び延びになって行きました。まだ食欲もなく数メートル歩くと動悸がしているような状態でしたが9月1日退院してきました。医者が言うには最初の治療で大分良くなっていたが、細胞を採取するために投与した抗がん剤が異常に効きそのために白血球内に大量に発生した骨髄腫細胞がほとんどない非常に良い常態の造血幹細胞を移植することが出来たと言うことです。完治という言葉のない病気ですが奇跡的なことに今は普通の人と変わらない血が流れています。

しかし何時再発するかは仏様のみお分かりになっておられます。澁澤芸術の完成を見ずに仏になろうなんてとんでもないと仏様より戻された身ですからきっと私が納得のいく絵が画けるようになるまでは生かして頂けるものと信じています。なるべくご心配をお掛けしまいと伏せてきた病気でしたがどうしても話さなければいけない方々には早くから病名を告げてしまいました。その方々には長い間本当にご心配をお掛けしました。澁澤卿復活です。この8ヶ月の荒行を満行して得られた悟りはきっとこれからの私の絵にも何らかの変化をもたらすものと思います。体力が戻り次第制作を開始します。期待して見守ってください。皆様には、これからも末永くご支援のほどよろしくお願いいたします。

11月に中国北京「友誼館」にて開催されます展覧会と中国政府より頂けることとなりました平和芸術賞の授与式に同行していただくツアーのご案内をしたところ想像を大きく上回り上海展の時よりも多い107名もの参加申し込みを頂きました。

こんなに多くの方々の気持ちがどんなにか闘病生活の励みになったことか。本当にありがとうございました。今回のツアーの申し込みは締め切らせていただきます。中国政府より全面的な協力を得ました国賓待遇のこのツアー模様は終わりましたら早々にHPに載せますので見てください。2009年3月に開催予定の中国美術館での回顧展は近年の代表大作50点新作20点あまりを一同に展示いたします。日本での回顧展の予定はまだまだ進歩の途中と自負いたしておりますのでまだ開催予定はありませんのでこの機会にぜひ同行ツアーにご参加してご高覧ください。11月のツアーの様子を見た上で来年秋までにお申し込みいただければ結構です。一回目のご案内で80名を越えています。まだ先の予定が分からなくて返事を出されていない方も多いと思いますが締め切り日は追ってお知らせいたしますのでお考えください。