東京藝術大学卒 日本画家 澁澤卿の軌跡

Diary 2010年03月

3月16日朝、犬の散歩でまだ鳴き方のへたくそな鶯の声が温かい風が揺らす木々の葉の音と共に聞こえてきました。春本番が近づいてきている鎌倉です。先週、台湾台北に行ってきました。故宮博物院にはすばらしい工芸品・書画が陳列されていましたが思っていたほど展示スペースが狭く、2時間もあればざっと観て回れるほどでした。60万点以上の膨大な所蔵品があり世界4大博物館の一つとされている博物院なので一日中観て回っても観尽くせないぐらいの展示物があると思っていたので少々がっかりでした。しかし、建物は大きく綺麗で、展示されていた品は一級品ばかりでしたから不満を言ってはいけないのかもしれません。中国が台湾を統合したいと思う最大の理由は中国から持ち出された故宮の宝物だと言われていることが分かる気がします。旅行のもう一つの楽しみは食べることです。台湾の料理といえば小籠包でしょう。一日一度はいろいろの店で食べてみました。中から溢れ出てくるスープの味が多少異なりますがどの店も美味しくシュウマイや餃子もまた格別でした。他の台湾料理は鶏肉と海鮮が主ですが、薄味でオイスターソース味や辛い味が好きな私には物足りなさを感じました。北京・上海・香港・台湾と有名な店で中華料理を食べてみましたが私には日本の名店の中華料理が一番美味しいと思えるのはやっぱり日本人だからでしょうか。私の知っている日本に来ている台湾や中国の人は自国の料理が日本の中華料理よりも美味しいと言います。子供の頃から食べなれた味が舌も心も癒すのでしょう。風景も同じではないでしょうか。中国の人は日本人が描いた中国の風景はなにか物足りなさを感じると言います。絵描きは、目に見えている形だけを描くのではなくそこに漂う空気や匂い差し込む光など目には見えないものまでを描ききれなければならない。数日間他国にスケッチに行ってそれらを描ききるのは至難の業である。私は、外国に行って日本に帰ってくると見慣れてしまってマンネリになっていた日本の空気の味と空気の色・空の色・光が再びよく見えてきます。私の海外旅行はこのために必要不可欠のものです。コンピュータや映像が発展していく近い未来に於いて絵の世界は、目に見えないものを如何に描くかが大切な要素になってくると思います。