東京藝術大学卒 日本画家 澁澤卿の軌跡

Diary 2010年09月08日

暑い暑いと言っているうちに私の卓上カレンダーの絵は秋の奥入瀬に変わっています。昼は油蝉夕方にはつくつくぼーし夜には草虫の鳴き声が騒がしく聞こえてきます。経済のことはほったらかしにして政界もなにやらごたごたとしています。そのために美術業界は不景気のため依頼が少なくて暇を持て余している画家も多いそうですが、私は相変わらず忙しい秋を向かえ冷房の効いたアトリエに籠もる毎日です。来年の卓上カレンダーの原画は描き上げたので近いうちに印刷に入り出来上がり次第皆様にお送りできると思います。昨年20数年間続けてきた壁掛け用のカレンダーの制作を断念してしまいましたので今年は何としても復活したいとおもっています。12月9日から開催される阿倍野近鉄での個展に出品する新作作品を載せて制作するために今、制作を急いでいます。描きあがったばかりの紅葉の銀閣寺と雪の降る金閣寺の50号が今アトリエのイーゼルに置いてあります。壁掛けカレンダーの1・2月と9・10月を飾ります。すぐに撮影をしてその後に額装をするために画商さんが受け取りにきますので再びこの絵に会えるのは展覧会の時です。わたしとしては出来上がった絵は早くアトリエからなくなったほうが次の作品に取り掛かりやすくて良いのです。精一杯の力をだして描きあげた絵が目の前に在りますと満足感が新しい絵を描き始める勢いを削いでしまいます。幸運なことに、この30年描きあがった絵がアトリエに何泊もすることがなく画商の方が持っていってしまいますので制作が停まってしまうことがありませんでした。洋画家のアトリエには描きかけの絵が床や壁に折り重なって置いてありますが私のアトリエには描きかけの絵は一点もありません。一点ずつ下絵・下絵のトレース・マチエール造り・水墨での着彩・岩絵の具での着彩と進めていって仕上げます。アトリエに来れば絵が見られると思って訪ねてこられた方や取材に来られた方は殺風景なアトリエに失望の色を隠せません。母屋にも一点も澁澤卿の絵は飾ってありません。とても絵描きの家とは思えません。ありがたいことに、今までに描いた全ての作品は日本国内外のコレクターに所蔵されています。歴史の片隅にでも名を残して数代先の所蔵者に私の絵を捨てられてしまうことがないように頑張らなければなりません。

10月15・16・17日に新橋にあります東京美術倶楽部で3年に一度開催されます東美特別展で、4階永善堂のブースの澁澤卿展には午後より出向くつもりです。ブースが狭い為に会場に待機していられないかもしれませんので、お出掛けくださる方は前日にお電話を頂けましたら幸いです。0467-25-3896。古美術・現代美術工芸を扱う老舗65店が自慢の品を並べ販売するという見ごたえのある展示会ですので一日芸術の秋を堪能しにお出掛けください。