東京藝術大学卒 日本画家 澁澤卿の軌跡

Diary 2004年06月

早いもので夏の太陽が顔を出す季節になってしまいました。この時期になると毎年制作の遅れが気になりだして気が引き締まってきます。この緊張感は苦しいような気持ちが良いような良く分からない代物です。個展も近じか50回目を迎えます。慣れるどころか回を重ねるごとにこの良くわからない代物は大きくなってくるようです。今年も秋に4年に一回開催されます東京美術倶楽部特別展の永善堂画廊のブースでの個展と来年早々に開催されます名古屋松坂屋での個展の出品作品の制作にこの半年は忙しくなりそうです。どうしてもその日の内にやってしまわなければいけない仕事を抱える毎日は辛いのですがその仕事を終えて夜中に一杯飲むワインの味は格別です。仕事から逃げた日には寝付きも悪くお酒も美味しくなく心が苛立ちます。ここまで読まれた方は私が仕事一筋のまじめな人間だとお思いでしょう。若いときはよく遊び、良くさぼりの毎日でしたこの生活を変えるために自分の負けず嫌いな性格を利用してみました。出来るはずのない枚数を展示する展覧会を毎年決めていったのです。制作が間に合わなくて開催できませんでしたと言って展覧会をキャンセルするのだけは負けず嫌いの性格が許しませんでした。嫌だけど仕方なくアトリエに入る。そんな生活を30年続けてきて最近になってようやく良く分からない代物を楽しむことが出来るようになってきました。若いときから絵を描いている事が何よりも好きだという作家がいます。昔は羨ましくて仕方がありませんでした。そしてそうでない自分に少しコンプレックスを持っていました。今思うと描いている行為に満足してきた作家には客観的に自分の絵を観る力に欠けていて年を取って描く絵からは作家の心が押し付けがましく感じられます。今は、以外と良いペースで作家人生を歩いているのかもと思えるようになりました。

さあ今回もキャンセルをしないようにがんばります。応援してください。