東京藝術大学卒 日本画家 澁澤卿の軌跡

Diary 2004年07月

忙しい日々から逃避してイコン画とエルミタージュ美術館を観に10日ほどモスクワとサンクト・ペテルブルグに行ってきました。200年ほどタイムスリップしたような町並みとロシア正教の教会内を飾るイコン画と華やかな宮殿とエルミタージュの大きさに圧倒されあっという間の旅でした。聖堂のイコン画は、金とテンペラの色彩が風化されてすばらしい色彩とマチエールを今に残していました。充分に私の脳裏にインプットしましたので何らかの影響が出てきそうです。もうひとつ感じたことがあります。それはエルミタージュの印象派の作品群からでなく17世紀のオランダの画家レンブラントやモスクワのトレチャコフ美術館でみた18・9世紀のイタリアの古典主義やロマン主義の影響を受けたロシアの古典絵画たちを見ていてでした。リアルに描いた人物画や風景画が非常に新鮮に私の目に飛び込んできたのです。私の中で、現在では写真や映像が発達してその役目を失ってしまったと思われていた絵画たちに写真では感じることが出来ない迫力と作家の心がこんなに感じられることを再認識させられました。何をあたりまえのことを言っているのかとお思いでしょうが今、日本の絵画が写真や映像の世界へと自ら近づいている様に思います。絵が持っている本来の力を失ってしまって写真のように薄っぺらい表現が多くなって来てはいないでしょうか。いつか私もその中にいて、そんな傾向に目が慣れていたようです。絵でしか出せない力強いリアリズムを再度求めて直して、現代の私の技法を駆使してそれを表現していこうと強く思いました。そんな意味でとても避けない時間を無理に使って行ったロシアへの旅でしたが私の心に大きな収穫があったと思います。絵を描く時間が足りない状態になって来ましたのでこのホームページの「ひとこと」がこれからしばらくほんとうの「ひとこと」になってしまうかもしれませんが私の言いたいことは、近日開催される展覧会の私の新しい作品たちから聞いてみてください。